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GOLDホームページより

2009年11月にGOLDホームページに公開された、新型インフルエンザについての専門家インタビュー記事の翻訳を紹介します。

COPD患者が聞く:
「新型インフルエンザはCOPDにどう影響するのか?」 GOLD専門医へのインタビュー 

 

この数か月間、新型インフルエンザH1N1の話題がメディア報道でも、一般市民の間でも広く取り上げられ、関心を呼んでいます。多くのCOPD患者は、新型インフルエンザがどのように影響するのか、またどうやって防いだらいいのか知りたいと思っています。そこで我々は、GOLD執行委員会の委員長であるロベルト・ロドリゲス-ロイジン教授と、GOLD科学委員会の委員長であるピーター・カルバリー教授に、H1N1新型インフルエンザウイルスについて、特にCOPD患者に関連のあることを質問し、答えていただきました。以下にその回答内容を掲載します。我々はこのインタビューが、COPD患者が健康を守るために、また主治医に相談する際のポイントを理解するために役立つことを願っています。

ロドリゲス-ロイジン教授

カルバリー教授

ロベルト・ロドリゲス-ロイジン教授

GOLD執行委員会 委員長

バルセロナ大学病院 呼吸器科 教授

(スペイン バルセロナ)

ピーター・カルバリー教授

GOLD科学委員会 委員長

ファザカリー病院

エイントレー大学病院

(イギリス リバプール)

 

Q.  新型インフルエンザH1N1とは何ですか?

A.  カルバリー教授: インフルエンザH1N1は、2009年3月にメキシコ、4月にアメリカで確認された新しい系統のインフルエンザウイルスです。6月までに70カ国以上で確認され、WHO(世界保健機関)は「パンデミック(流行)」を宣言しました。これはウイルスの起こす病気が重篤だからという理由ではなく、単に、人から人への感染の持続が世界の2つ以上の地域で確認されたという意味です。

報道では、特に最初にこのウイルスが明らかになったとき、「豚インフルエンザ」とされることがありましたが、それはこのウイルスが豚で流行し、後に人に感染したと信じられているためです(このような動物種を超えた感染は、新しい系統のインフルエンザウイルスが流行するとき、一般的にみられる現象です)。ウイルスの正式な名称は、WHOによるとインフルエンザA型(H1N1)です。これはとても長い名前なので、私は通常H1N1インフルエンザまたはH1N1フルーと言っています。

 

Q.  新型インフルエンザはどのように人から人へ拡がるのですか?

A.  ロドリゲス-ロイジン教授: 新型インフルエンザウイルスは、ほかの季節性インフルエンザウイルスと同じ方法で感染が拡がります。感染した人が咳やくしゃみをするとき、その飛沫にはウイルスが含まれています。ほかの人がそれを吸い込んでしまうこともありますし、また手や家具の表面が汚染されることがあります。汚染された表面を触った手で口や鼻を触れば、インフルエンザに感染するわけです。

 

Q.  新型インフルエンザの症状はどのようなものですか?

A.  ロドリゲス-ロイジン教授: 新型インフルエンザの症状は、感染のしかたと同じく、季節性インフルエンザと同じです。よくみられる症状は発熱、咳、喉の痛み、関節痛、頭痛、寒け、だるさなどです。下痢や嘔吐を伴うこともあります。季節性インフルエンザと同様に、一部の患者では肺炎や呼吸不全などの重症の合併症を起こすことがあり、それによって死亡することもあります。

 

Q.  COPD患者は、新型インフルエンザのリスクが高いのですか?

A.  カルバリー教授: 現時点で、COPD患者の新型インフルエンザについての情報はほとんどありません。しかし、新型インフルエンザは、季節性インフルエンザと同じく、慢性的な基礎疾患を悪化させる可能性があり、新型インフルエンザにかかって入院した人の半数は基礎疾患を持っていました。

また、COPD患者は、インフルエンザを含む呼吸器ウイルス感染による合併症のリスクが高いことがわかっています。呼吸器感染症は、COPD増悪の主要な原因であり、増悪を起こすと長期にわたってQOL(生活の質)が低下する可能性があります。

新型インフルエンザにかかった多くの人は、比較的症状が軽く、特別な治療をしなくても回復しますが、合併症のリスクを考えれば、COPD患者にとって、全力を尽くして感染を防ぐべきだと言えます。特に、ほかの慢性疾患(併存症)、とりわけ冠動脈疾患を持っているCOPD患者では感染予防が重要です。

 

Q. COPD患者は、どのようにして感染を防げばよいのでしょう?

A.  ロドリゲス-ロイジン教授: 新型インフルエンザに対するワクチンの臨床試験が実施されており、北半球が秋のインフルエンザシーズンを迎えるまでには多くの国でワクチン接種が可能になると思います。ですから、感染予防のためにできる大切なことのひとつは、医療機関や地域の保健所に出かけ、ワクチン接種が受けられるかどうか確かめることです。

加えて、新型インフルエンザは季節性インフルエンザと同じように感染しますので、季節性インフルエンザと同じ方法で予防ができます。WHO(世界保健機関)によると、感染予防に有効とされているのは次のようなことです。

  • 口や鼻をさわらないようにする。
  • 石けんと水でよく手を洗うか、アルコールを含む手拭きで手をきれいにする。定期的に行う(特に口と鼻をさわったとき、またはウイルスが飛び散った可能性のある場所をさわったとき)。
  • 具合の悪い人と密接に接触しないようにする。
  • 可能であれば、人ごみにいる時間を短くする。
  • 窓を開けて居住空間の空気の流れをよくする。

最後に、新型インフルエンザへの感染予防に限ったことではありませんが、たとえインフルエンザに感染したとしても可能な限り肺を健康な状態に保つために、COPD患者にできることがあります。呼吸が苦しくなったときにどうすればいいのか主治医に相談し、薬の使い方を確かめてください。治療薬が手元に十分あることを確かめ、医師に指示された方法で使用してください。よく眠り、栄養のある食べ物を食べ、できる限り体を動かすなど、健康によい習慣を続けてください。

 

Q.  GOLDは肺炎球菌と季節性インフルエンザのワクチンを推奨しています。これらのワクチンには新型インフルエンザの予防効果はありますか?

A.  カルバリー教授: いいえ。 新型インフルエンザのワクチンはまったく別のものなので、別に受ける必要があります。

 

Q.  H1N1ワクチンを受けた場合、通常のインフルエンザワクチンも受ける必要があるのですか?

A.  カルバリー教授: はい。 なぜなら通常の季節性インフルエンザのワクチンは、保健当局がその年に流行すると予測したインフルエンザの新しいタイプへの感染を防ぐものだからです。

 

Q.  COPD患者が、新型インフルエンザ予防のために服用すべき薬はありますか?

A.  ロドリゲス-ロイジン教授: 医師のアドバイスがない限り、新型インフルエンザの予防薬や治療薬を服用してはいけません。抗生物質や、ステロイド薬は予防のために服用してはいけません。オセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)のような抗ウイルス薬は新型インフルエンザに効果がありますが、医師の指示がない限り服用してはいけません。WHOは、個人がインターネットで抗ウイルス薬を購入することに対して、十分注意するよう警告しています。 

 

Q.  通常のCOPD治療薬についてはどうでしょうか --新型インフルエンザの脅威を考えて、いつも服用している薬の量を増やしたほうがよいのでしょうか?

A.  ロドリゲス-ロイジン教授: いいえ。繰り返しますが、患者は処方された治療薬を通常通りに服用して、できるだけ肺を健康な状態に保つことが重要です。呼吸が苦しくなったときに使う薬を準備し、どのように行動すべきかを医師に相談しておくのはよいことです。しかし、医師の指示があるまでは、通常の薬の量や使用回数を変更してはいけません。

 

Q.  COPD患者が新型インフルエンザにかかったかも知れないと思ったとき、どうすればいいですか?

A.  カルバリー教授: 医療機関か地域の保健所に行かなければ新型インフルエンザの確定診断はできません。しかし、調子が悪いと感じて、高熱、咳、喉の痛みなど新型インフルエンザの症状がある場合には、すぐに治療を受けて、ウイルス感染を拡げないようにする必要があります。

  • 通常のCOPD治療は継続してください。
  • 主治医に連絡し、どのようにすればいいか相談してください。可能であれば、医療機関に足を運ぶ前に(保健所などで)検査を受けた方がよいかどうか、医師と相談してください。
  • 増悪を起こすときのように、COPDの症状がだんだん悪くなっていくと感じた場合は、すみやかに主治医に連絡してください。
  • 体を温め、休養し、十分な水分を摂ってください。熱っぽかったり、筋肉痛があったりするときには、アセトアミノフェンのようなシンプルな解熱薬を服用します。
  • 家族や友人に具合が悪いことを知らせ、ほかの人とは接触しないように努めます。仕事や学校は休み、人ごみに出かけないよう、家の中で過ごします。
  • 咳やくしゃみをするときは、ティッシュペーパーを使うか、肘を曲げて、鼻と口を覆ってください。
  • 使用済みのティッシュペーパーは注意深く廃棄し、すぐに手を洗うか、アルコールを含む手拭きで手を清潔にします。
  • 飛沫をまき散らさないよう、他人が近くにいるときにはマスクをしてください(家にいるときも外出先でも)。マスクをしているからと言って、ほかの衛生手段が不必要というわけではありません。

 

Q.  新型インフルエンザの予防や対策に関する情報は、どこで入手できますか?

A.  ロドリゲス-ロイジン教授: WHO(世界保健機関)と各国の政府機関が新型インフルエンザに関する背景情報をオンラインで提供しています。

日本の情報は以下のウエブサイトが参考になります。